広く知られる「犬の十戒」は、飼い主の心を癒やす美しいポエムとして受け止められがちで、本来は「戒め」であるはずなのに「泣ける」コンテンツとして扱われることも少なくありません。
私たちは、その内容が時として、安易な生体販売の背景にある責任から目をそらし、購買意欲を刺激する側面すら持つことに、深い懸念を抱いてきました。
人為的な繁殖、無責任な売買、自己中心的な飼育、商品として消費することが美化される風潮…。そうした人間の都合によって奪われる犬たちの命や尊厳に対し、警鐘を鳴らす必要性を強く感じています。
そこで生まれたのが、「シン・犬の十戒」です。
シン・犬の十戒
1、私を人生を彩るための幸せアイテムにしないで!
私の命は、あなたの人生ストーリーを豊かにするためのアイテムでも、癒しのための道具でもありません。私の命は私のために存在します。
2、私はモノではない、お金で買うのはやめて!
売るために妊娠出産させられ、無責任に売られるのも、買う人間がいるから。家族として迎える優しい人ではなく、命を商品として流通させる連鎖の一員。それがあなた(買い主)です。
3、私にも自然の恵みを!ペットフードばかり食べさせないで!
栄養バランスという言葉を盾に、ペット産業が喜ぶ人工的な固形物ばかり食べさせるのではなく、私が喜ぶ新鮮な肉や魚をもっと食べさせて下さい。
4、私を金で買っておいて、家族(我が子)と呼ばないで !
私の家族は、売買の為に引き離された親犬や兄弟姉妹犬です。そんなシステムを利用しておいて、家族や我が子などと呼ばないで下さい、私の家族への侮辱です。
5、私をSNSで自慢してペットブームを煽らないで!
私にはSNSが何なのかわかりませんが、一体誰に何を自慢してるのですか? 誰かの「犬を買いたい」と思う欲を助長する可能性があるなら、私はそれを望みません。
6、私を大切だと過度にアピールして承認欲求を満たさないで!
「人間よりも、親よりも子供よりも、愛犬の方が大切です!」わざわざ他人や大事な人たちと比較して、犬想いの自分をアピールするような人間に愛されても嬉しくありません。
7、私にパートナーと出会う機会を与えて!
生命の目的はパートナーを見つけて子孫を残すことであり、買い主と出会うために生まれてきたのではありません。できないのなら、虐待と同等の仕打ちだと自覚して下さい。
8、私の健康な体にメスを入れて生殖機能を切除しないで !
私の最大の幸せは、自分の子に愛情を注いで育てることです。私の意志を無視して、命のバトンを奪うなら、命への冒涜行為だと認め、一生十字架を背負って生きて下さい。
9、私が死んで虹の橋で待ってると思わないで !
こちらの世界で、生体販売の犠牲になった本当の家族と再会して真実を知った今、買い主を待つことはありません。あなたを待ち受けるのは、裁きの時でしょう。
10、私は飼い主の行動で評価される。人間社会のルールを守れ!
登録はもちろん、予防接種や注射済票の装着、ノーリードに咬傷事故、糞尿や騒音問題、人間社会のルールを守れない人間に、私を飼う資格などありません。
※買い主:生体販売利用者。主にペットショップから買う人。保護犬を飼う人と区別する必要がある項目で用いています。
これは、飼い主が気持ちよくなる為にあるような従来の「犬の十戒」とは違い、より犬たちの真の視点に立ったメッセージです。
美化されたペット文化の陰で犠牲になる命、そして人間の都合で利用される犬たちの苦しみ。それらに対する痛烈な問いかけであり、飼い主への真の「戒め」となることを目指しました。
犬たちは、単なる「可愛いペット」ではなく、あなたと同じように意思を持ち、感情を抱き、そして何よりも自らの命の尊厳を持つ存在です。
この「シン・犬の十戒」を通して、犬を迎え入れることの意味、そして共に生きる責任について、深く考えていただければ幸いです。
2025年 Dog’s Dignity Japan 代表 早野 武